元・訪問介護事業所経営者が語る、現場のホンネ

サービス提供責任者の資格要件|介護保険と障害福祉の違い

サービス提供責任者の資格要件|介護保険と障害福祉の違い

訪問介護事業所を運営していると、「この職員をサービス提供責任者(サ責)にしてよいか」「利用者が増えたらサ責を何人置けばいいか」を判断する場面が必ず出てきます。資格や人数を誤ると、報酬の減算や運営指導での指摘につながりかねません。しかも、介護保険の訪問介護と障害福祉の居宅介護などでは、資格要件も配置基準も同じではありません。

この記事では、大阪で介護保険の訪問介護と、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・移動支援をすべて運営してきた元経営者の立場から、サ責の資格要件と配置基準を、介護保険と障害福祉の違いに分けて整理します。

この記事の結論
介護保険の訪問介護:介護福祉士、実務者研修修了者など。2018年4月から初任者研修修了者はサ責になれない
障害福祉の居宅介護:介護福祉士、実務者研修修了者など。初任者研修修了者は実務経験3年以上で可能だが、報酬が30%減算される
同行援護・行動援護:上記に加えて、それぞれ専用の研修や実務経験が必要
任命前の確認:①資格 ②必要な人数 ③常勤・専従かどうかの3点

目次

サービス提供責任者の資格要件|介護保険の訪問介護

まずは、介護保険の訪問介護のサービス提供責任者です。2018年4月の制度改正で要件が変わっているため、古い情報のまま判断しないよう注意が必要です。ここでは、現在の資格要件と、改正で何が変わったかを確認します。

サービス提供責任者になれる資格

三重県長寿介護課の資料(平成30年3月)によると、平成30年4月1日以降、訪問介護のサービス提供責任者の要件は次のとおりです。いずれか1つを満たしていれば、サ責に任命できます。

  • 介護福祉士
  • 実務者研修の修了者(資料では「指定を受けた学校又は養成施設において、1月以上、介護福祉士として必要な知識及び技能を習得した者」と表現)
  • 旧・介護職員基礎研修課程、または旧・介護職員養成研修1級課程の修了者

実際に新しくサ責を任命する場合、対象になるのはほとんどが、介護福祉士か実務者研修の修了者です。資格の詳しい扱いや、看護師等の扱いについては、指定を受けている自治体の案内で確認してください。

2018年4月から初任者研修修了者はサ責になれない

同じ資料によると、平成30年4月1日の改正で、介護職員初任者研修の修了者(旧・介護職員養成研修2級課程の修了者を含む)は、サービス提供責任者の要件から除かれました。改正の前日に、すでにサ責として働いていた人に限って、経過措置として1年間(平成31年3月31日まで)は引き続き従事できましたが、その間も報酬は所定単位数の70%で算定されていました。

なお、初任者研修の修了者が訪問介護員(ヘルパー)として働くことは、改正後も引き続き可能です。初任者研修のスタッフをサ責に育てたい場合は、実務者研修を受講してもらうことになります。筆者の事業所では、改正の時点でサ責が要件を満たしていたため、この改正の影響は受けませんでした。

サービス提供責任者の資格要件|障害福祉サービス

障害福祉サービスのサービス提供責任者は、介護保険とは要件が異なり、サービスの種類によっても変わります。ここでは、大阪市が公表している資料(2023年5月作成)をもとに、居宅介護・重度訪問介護、同行援護、行動援護の順に整理します。

居宅介護・重度訪問介護

大阪市の資料では、居宅介護・重度訪問介護のサービス提供責任者になれる資格として、介護福祉士、実務者研修の修了者、介護職員基礎研修の修了者、居宅介護従業者養成研修1級課程の修了者、看護師・准看護師などが挙げられています。ここまでは、介護保険の訪問介護とほぼ同じ顔ぶれです。

介護保険と大きく違うのは、介護職員初任者研修や旧2級課程の修了者でも、実務経験3年以上があればサービス提供責任者になれる点です。ただし、居宅介護では所定単位数の30%減算の対象になります。資料では、この扱いは暫定的なものなので、できる限り早期に実務者研修を受講させるか、介護福祉士の資格を取得させるよう努めなければならない、とも書かれています。

同行援護

同行援護のサービス提供責任者は、居宅介護と同じ資格要件に加えて、同行援護従業者養成研修(一般課程・応用課程)の修了などが必要です。大阪市の資料では、大阪府の移動支援従業者養成研修の視覚障がい者課程を修了した人は、同行援護従業者養成研修の一般課程の修了者とみなされますが、サ責として働く場合は、応用課程を新たに受講する必要があるとされています。

行動援護

行動援護のサービス提供責任者は、行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修(基礎研修と実践研修)の修了に加えて、知的障がい児者や精神障がい者への直接支援業務の実務経験(大阪市の資料では3年以上かつ540日以上)が必要です。4つのサービスの中では、最も要件が厳しいサービスです。

また、熊本市障がい福祉課の令和6年度の集団指導資料では、介護福祉士や実務者研修の修了者などを行動援護従業者養成研修の修了者とみなす経過措置は、令和9年3月31日までとされています。この経過措置で指定を受けている事業所は、期限までに研修を受講させておく必要があります。

介護保険と障害福祉の違い(比較表)

ここまでの内容を、介護保険の訪問介護と障害福祉の居宅介護で比べると、次のようになります。同じ「サ責」でも、初任者研修修了者の扱いが大きく違う点に注意してください。

資格 介護保険の訪問介護 障害福祉の居宅介護
介護福祉士 ○ ○
実務者研修の修了者 ○ ○
介護職員基礎研修・1級課程の修了者 ○ ○
初任者研修・旧2級課程の修了者 ×(2018年4月から) 実務経験3年以上で可(30%減算)

出典:三重県長寿介護課の資料(平成30年3月)、大阪市の資料(2023年5月)。自治体によって運用が異なる場合があるため、指定を受けている自治体の最新の案内を確認してください。

サービス提供責任者の配置基準

資格を満たす職員がいても、人数が足りなければ基準を満たせません。配置基準も、介護保険と障害福祉で考え方が違います。ここでは、東京都と熊本市が公表している資料をもとに整理します。

介護保険の訪問介護は「利用者40人ごとに1人以上」

東京都の資料では、訪問介護事業所ごとに、常勤の訪問介護員等のうち、利用者の数が40人またはその端数を増すごとに1人以上をサービス提供責任者とする必要があるとされています。利用者の数は前3か月の平均値で数え、通院等乗降介助だけを利用した人は0.1人として計算します。

2人以上が必要な場合は、常勤換算で配置することもできますが、非常勤のサ責は常勤職員の勤務時間の2分の1以上の勤務が必要です。また、常勤のサ責を3人以上置いている、サ責の業務に主として従事する人が1人以上いる、ソフトウェアなどの活用で業務が効率化されている、という要件をすべて満たす場合は、平成27年度の改正により、利用者50人ごとに1人の配置も可能とされています。

東京都の資料では、配置の必要数は毎月の利用者数で決まるため、毎月の実利用者数・前3か月の平均値・必要な配置人数を記録して保存するよう求めています。

障害福祉の居宅介護は「3つの基準のいずれか」

熊本市障がい福祉課の令和6年度の集団指導資料では、居宅介護のサービス提供責任者は、次のいずれかに該当する人数を配置するよう求めています。利用者数だけで決まる介護保険と違い、サービス提供時間やヘルパーの人数でも判断します。

  • 月間の延べサービス提供時間が、おおむね450時間またはその端数を増すごとに1人以上
  • 訪問介護員等の数が、10人またはその端数を増すごとに1人以上
  • 利用者の数が、40人またはその端数を増すごとに1人以上

同じ資料では、運営指導で指摘が多い事項として、常勤専従のサ責が配置されていないこと(管理者やヘルパーとの兼務は可)や、サ責の配置数が不足していることが挙げられています。

元経営者がサービス提供責任者をどう確保・処遇してきたか

ここからは、筆者が大阪で、介護保険の訪問介護と障害福祉の各サービスを運営してきた中で、サ責をどう確保し、どう処遇してきたかを紹介します。事業所の規模や地域によって最適な形は違いますが、判断の材料にしてください。

実務者研修の費用を事業所が負担し、サ責に登用した

筆者の事業所では、スタッフの実務者研修の受講費用を事業所が負担し、修了したスタッフをサービス提供責任者に登用してきました。介護保険の訪問介護では初任者研修のままではサ責になれないため、将来サ責を任せたい人には、早めに実務者研修を受けてもらうことが、そのままサ責の確保につながります。

資格手当も、資格の段階に合わせて付けていました。実務者研修の修了者には8,000円、介護福祉士には13,000円程度です。手当があると、スタッフにとっても実務者研修を受ける理由がはっきりし、受講を勧めやすくなります。

サ責は1人体制で、サ責手当は30,000円

筆者の事業所では、サ責は1人体制で、役職手当として30,000円のサ責手当を付けていました。サ責は、計画の作成、ヘルパーの調整・指導、利用者やケアマネジャーとの連絡と、業務の幅が広い役職です。その負担に見合う手当を付けておくことは、サ責を長く続けてもらうためにも必要だと考えていました。

サ責という役職の実際の大変さについては、こちらの記事で、経営者として見てきた実情をまとめています。

運営指導で指摘を受けないために

筆者の事業所では、運営指導(実地指導)で、サ責の資格や配置について指摘を受けたことはありませんでした。特別なことをしていたわけではなく、サ責を任命する時点で資格を確認し、利用者数の変化に応じて必要な人数を満たしているかを確認していただけです。

ただ、利用者が増えてきた時期は、必要な配置人数がいつ増えるのかを意識しておく必要があります。東京都の資料にあるように、毎月の利用者数と必要な配置人数を記録しておけば、運営指導で確認されたときにもすぐ説明できます。

サービス提供責任者の資格要件に関するよくある質問

最後に、サ責を任命するときに迷いやすい点をまとめました。細かな運用は自治体によって異なる場合があるため、判断に迷うときは、指定を受けている自治体の担当窓口に確認してください。

管理者とサービス提供責任者は兼務できますか?

熊本市の資料では、障害福祉の居宅介護について、常勤専従のサ責は管理者やヘルパーとの兼務が可能とされています。ただし、管理者は管理業務に支障のない範囲でのみ兼務が認められ、サ責がヘルパー業務に追われて本来の業務に支障が出ていることも、指導事項として挙げられています。兼務させる場合は、業務量のバランスに注意が必要です。

非常勤の職員でもサービス提供責任者になれますか?

介護保険の訪問介護では、サ責が2人以上必要な事業所で常勤換算による配置をする場合、非常勤の職員をサ責に充てることができます。東京都の資料では、その場合も、非常勤のサ責は常勤職員の勤務時間の2分の1以上の勤務が必要とされています。最低限必要な常勤のサ責の人数も決まっているため、自治体の資料の別表で確認してください。

初任者研修のスタッフをサ責にしたい場合はどうすればいいですか?

介護保険の訪問介護では、初任者研修のままではサ責になれないため、実務者研修を受講してもらう必要があります。実務者研修の内容・期間・費用を抑える方法は、こちらの記事でまとめています。

サービス提供責任者の資格要件まとめ

サービス提供責任者の資格要件は、介護保険の訪問介護では介護福祉士や実務者研修の修了者などに限られ、2018年4月からは初任者研修の修了者はサ責になれません。一方、障害福祉の居宅介護では、初任者研修の修了者でも実務経験3年以上でサ責になれますが、報酬が30%減算されます。同行援護や行動援護では、さらに専用の研修や実務経験が必要です。

サ責を任命する前には、資格・必要な人数・常勤専従かどうかの3点を、指定を受けている自治体の最新の案内と照らし合わせて確認してください。将来サ責を任せたいスタッフには、早めに実務者研修を受けてもらうことが、サ責を安定して確保するいちばんの近道です。

執筆者
神野司(かみの つかさ)
大阪で訪問介護事業所を13年間経営。2018〜2022年は東京の高齢者
デイサービス代表も兼任し、大阪・東京両方で採用面接を50例以上経験。
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