面接で「質問する側」に回っていいんです
介護職の面接というと、「聞かれたことに答える場」だと身構えてしまう方が多いのではないでしょうか。でも実は、面接は事業所側があなたを選ぶ場であると同時に、あなたが事業所を選ぶ場でもあります。
以前の記事でも触れましたが、介護職の離職理由の上位には、給与や体力的な負担だけでなく「人間関係」が挙がることが少なくありません。サービス提供責任者と登録ヘルパーの間の調整の難しさなど、職場の人間関係にまつわる悩みは、入ってから初めて気づくケースが多いテーマです。

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だからこそ、この記事では「入社してから後悔しないために、面接や職場見学の場でどんな質問をしておくべきか」を、法的な裏付けとあわせて整理します。「こんなことを聞いたら失礼にあたるのでは」と遠慮する必要はありません。むしろ、確認しないまま入職する方がリスクが大きいのです。
そもそも、面接で質問することは「権利」です
求人票に書かれている情報だけでは分からないことを、面接で確認したい。これは決してわがままな要求ではありません。
職業安定法第5条の3では、求人者(事業所側)に対して、労働条件を明示する義務が定められています。この「労働条件」には、就業時転換に関する事項——つまり、夜勤の有無やシフトの組み方といった働き方の実態も含まれます。
制度の詳細は、時期によって運用が変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省や各都道府県労働局の公式情報でご確認ください。
つまり、夜勤体制やシフトについて質問することは、法律によって保障された、求職者の正当な権利の範囲内にある行為です。この前提を知っておくだけでも、面接で質問する際の気持ちの持ちようは変わってくるはずです。
確認すべき質問リスト
①夜勤体制・シフトについて
求人票に「夜勤あり」とだけ書かれていても、実際の頻度や組み方は事業所によって大きく異なります。以下のような点は、遠慮なく確認してよい項目です。
- 夜勤は月に何回程度が目安か
- 夜勤は固定制か、日勤との交代制か
- 急な欠員が出た場合、誰がどうカバーする体制になっているか
- 希望休や有給は、実際にどの程度通っているか
特に最後の「希望休が実際に通っているか」という質問は、制度上の建前ではなく運用の実態を確認する意味で重要です。答え方が曖昧だったり、質問自体を嫌がるような反応があったりする場合は、一つの判断材料になります。
実際にどう答えられたら注意した方がよいか、具体的な回答パターンで見てみましょう。
- 「人によって違います」とだけ答え、具体的な回数・頻度に踏み込まない
- 欠員時のカバー体制を聞いても「その時々で対応しています」で終わり、誰がどう対応するかの説明がない
- 有給・希望休について聞いた瞬間、表情が曇る、あるいは話題を変えようとする
- 「うちは大丈夫ですよ」「みんな普通にこなしてます」など、根拠となる説明がないまま安心させようとする
こうした答え方が一度あったからといって、必ずしもその事業所全体に問題があるとは限りません。ただ、複数の質問で同じような曖昧さが続く場合は、慎重に検討する材料にしてよいでしょう。
②離職率について
「この事業所の離職率はどれくらいですか」という質問は、多くの求職者が気になりつつも聞きにくいと感じる項目かもしれません。ここで、正確な制度的背景を押さえておきましょう。
介護サービス情報の公表制度には「離職率」の項目が存在しますが、これは義務ではなく「任意報告情報」という位置づけです。つまり、すべての事業所が必ず開示しているわけではなく、都道府県ごとの運用によって、公開している事業所とそうでない事業所があります。
この前提を知っていると、面接での聞き方も変わってきます。「離職率を教えてください」と単刀直入に聞くよりも、次のような聞き方の方が、事業所側も答えやすい場合があります。
- 「勤続年数が長いスタッフの方は、どれくらいの割合でいらっしゃいますか」
- 「介護サービス情報の公表制度で、離職率を公開されていますか」
後者のように、制度名を挙げて質問することで、「この人はきちんと調べた上で質問している」という印象を与えることもできます。回答を渋られた場合でも、それ自体が悪いというより、「任意報告のため、公開していない事業所も一定数ある」という制度の実情として受け止めておくとよいでしょう。
③職場の雰囲気・人間関係について
夜勤体制や離職率のような制度的な裏付けがある項目とは異なり、職場の雰囲気については公的な統計や制度はありません。ここは、面接・職場見学の際の「観察」で見抜いていく部分になります。
- 職場見学の際、スタッフ同士の会話の様子(挨拶があるか、表情が硬くないか)
- 質問への回答が、特定の一人に集中せず、複数のスタッフから自然に出てくるか
- 「うちは大丈夫です」で終わらず、具体的なエピソードを交えて答えてくれるか
- サービス提供責任者や管理者が、現場のスタッフの名前や状況を具体的に把握しているか
こればかりは、「これを聞けば安心」という決まった正解がある領域ではありません。ただ、可能であれば書類選考・面接だけで判断せず、職場見学を申し出て、実際の空気感を自分の目で確かめることをおすすめします。
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神野司
採用面接を50例以上見てきましたが、職場見学を申し出た方は、それだけで「よく調べている人」という印象を残せます。遠慮せず、見せてもらえるか聞いてみてください。
質問する際に気をつけたいこと
ここまで挙げた質問は、いずれも法律や制度に裏付けられた、聞いて構わない内容です。ただし、聞き方によっては、面接官に「詰問されている」という印象を与えてしまうこともあります。
- 面接の冒頭ではなく、事業所側の説明が一通り終わったタイミングで質問する
- 「教えていただけますか」「差し支えなければ」といった前置きを添える
- 一度にすべてを聞こうとせず、優先順位の高いものから2〜3個に絞る
質問すること自体は正当な権利ですが、伝え方次第で、事業所側との最初の関係づくりにもつながります。対立ではなく、お互いに納得した上で働き始めるための確認、という姿勢で臨むとよいでしょう。
ある応募者との、率直なやりとりから
ここまで、法律や制度に基づいた質問の仕方を中心に説明してきましたが、面接は「質問する場」であると同時に、「自分の希望を率直に伝える場」でもあります。最後に、実際にあったやりとりを一つご紹介します。
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神野司
以前、グループホームの世話人を募集していた際、ある応募者の方から「収入を増やしたいので、夜勤明けの当日に、登録ヘルパーとしても働きたい」という希望を、面接の場で率直に伝えられたことがありました。法律上、これ自体は問題のある働き方ではありません。ただ、夜勤明けにそのまま別の仕事に入ることは、休息が十分取れず、生活リズムを崩して体を壊す原因にもなり得ます。そこで、前後の休息時間をしっかり確保することと、夜勤明けの睡眠・生活リズムの整え方を工夫する必要があることを、率直にお伝えしました。その方は当事業所で働き始め、少しずつ慣れていく中で、今では夜勤明けの日にも身体介護を1〜2件、無理なくこなせるようになっています。
この方が「稼ぎたい」という本音を、面接の場で率直に伝えてくれたからこそ、事業所側も、単に希望を叶えるだけでなく、体調管理という現実的な視点をあわせて共有することができました。もし希望を伝えないまま働き始めていたら、無理を重ねて体調を崩し、早期離職につながっていた可能性もあります。
働き方の希望を率直に伝えることは、面接を単なる「選考の場」から「対話の場」に変えます。収入を増やしたい、特定の曜日は休みたいといった希望があるなら、遠慮せずに伝えてみてください。その反応の仕方からも、その事業所が働き手をどう扱ってくれるかが見えてくるはずです。
まとめ
面接や職場見学での質問は、「失礼にあたるのでは」と遠慮するものではなく、職業安定法によって保障された正当な権利の行使です。特に夜勤体制・シフトについては法的根拠が明確にあり、離職率についても「任意報告情報」という正確な制度理解があれば、聞き方を工夫することができます。
職場の雰囲気のように制度の裏付けがない部分は、面接・職場見学での観察を通じて、自分の目と耳で確かめていく必要があります。入社してからの「こんなはずじゃなかった」を減らすために、この記事のリストを、面接前のチェックリストとして活用していただければと思います。
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- 執筆者
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神野司(かみの つかさ)
大阪で訪問介護事業所を13年間経営。2018〜2022年は東京の高齢者デイサービス代表も兼任し、大阪・東京両方で採用面接を50例以上経験。
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