訪問介護の特定事業所加算は、決められた要件を満たした事業所が、基本の報酬に3〜20%を上乗せできる加算です。区分はⅠ〜Ⅴの5つで、Ⅰ〜Ⅳはどれか1つ、Ⅴだけはほかの区分と一緒に算定できます。
この記事では、2024年度(令和6年度)の改定後の要件と加算率、1と2の違いを、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。東京で区分Ⅰを算定し、実地指導で返還になった筆者の経験も紹介します。
訪問介護の特定事業所加算の要件
訪問介護の特定事業所加算の要件は、体制要件・人材要件・重度者等対応要件の3種類です。研修や会議などの体制要件(1)〜(5)は、どの区分でも共通で必要です。
訪問介護の特定事業所加算は、区分ごとに人材要件や重度者等対応要件を組み合わせます。番号と内容は、次の表のとおりです。
| 番号 | 要件の内容 | 使う区分 |
|---|---|---|
| (1) | 訪問介護員・サ責ごとの研修計画にもとづく研修 | 全区分 |
| (2) | 利用者の情報や留意事項を伝える会議を定期的に開く | 全区分 |
| (3) | 利用者の情報を文書等で伝え、訪問介護員から報告を受ける | 全区分 |
| (4) | 健康診断などを定期的に行う | 全区分 |
| (5) | 緊急時の対応方法を明示する | 全区分 |
| (6) | 看護師と24時間連絡できる体制、看取り期の対応方針、職員研修など | Ⅰ・Ⅲ((14)を選ぶ場合) |
| (7) | 中山間地域等に住む利用者に、継続してサービスを提供している | Ⅴ |
| (8) | サ責が起点になり、訪問介護計画を随時見直している | Ⅴ |
| (9) | 介護福祉士が30%以上、または介護福祉士・実務者研修修了者等が50%以上 | Ⅰ・Ⅱ |
| (10) | サ責全員が実務3年以上の介護福祉士、または実務5年以上の実務者研修修了者等 | Ⅰ・Ⅱ |
| (11) | 基準より多く、常勤のサ責を1人以上配置している | Ⅲ・Ⅳ |
| (12) | 勤続7年以上の訪問介護員等が30%以上 | Ⅲ・Ⅳ |
| (13) | 要介護4・5、認知症の日常生活自立度Ⅲ以上、たんの吸引等が必要な人が20%以上 | Ⅰ・Ⅲ |
| (14) | 看取り期の利用者への対応実績が1人以上((6)もあわせて満たす) | Ⅰ・Ⅲ |
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」9〜10ページ。番号は同資料の番号です。
文書等による伝達は「サービス提供の前」に行う
訪問介護の特定事業所加算の体制要件(3)では、文書等での指示をサービスの前に行います。サ責が訪問介護員に、利用者の情報や留意事項を伝えてから始める決まりです。終わったあとは、訪問介護員から適宜報告を受けます。
名古屋市は2024年11月、この指示について厚生労働省に確認し、事業所へ注意を呼びかけました。出典は名古屋市の注意喚起文書です。
同じ資料では、サ責が全員不在のときは、事前にまとめて指示してよいとされています。筆者は、この「事前」が守れておらず、訪問介護の特定事業所加算を返還しました。
神野司
メールやチャットの指示は、送った時刻が記録に残ります。訪問介護の特定事業所加算を守るため、指示はサービス開始の前に送ると決めておきましょう。間に合わないときの一括指示のやり方も、サ責全員でそろえておくと安全です。
訪問介護の特定事業所加算の加算率
訪問介護の特定事業所加算の加算率は、Ⅰが20%、ⅡとⅢが10%、ⅣとⅤが3%です。1回の訪問ごとに、所定の単位数へこの割合を上乗せします。
| 区分 | 加算率 | ほかの区分との組み合わせ |
|---|---|---|
| Ⅰ | 20% | Ⅰ〜Ⅳはどれか1つだけ |
| Ⅱ | 10% | |
| Ⅲ | 10% | |
| Ⅳ | 3% | |
| Ⅴ | 3% | Ⅰ〜Ⅳと一緒に算定できる |
訪問介護の特定事業所加算の率の出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」、同「改定事項について」。
2024年度の改定で、訪問介護の特定事業所加算のうち、それまでのⅣ(5%)はなくなりました。旧Ⅴ(3%)がⅣになり、中山間地域等を評価するⅤが新しくできています。
訪問介護の特定事業所加算Ⅴは、特別地域訪問介護加算や中山間地域等の小規模事業所加算などとは、一緒に算定できません。
訪問介護の特定事業所加算 1と2の違い
訪問介護の特定事業所加算の1と2の違いは、人材要件の数と、重度者への対応が要るかどうかです。加算率は、Ⅰが20%、Ⅱが10%です。
| 比べる点 | Ⅰ(20%) | Ⅱ(10%) |
|---|---|---|
| 体制要件 | (1)〜(5) | (1)〜(5) |
| 人材要件 | (9)と(10)の両方 | (9)か(10)のどちらか |
| 重度者等対応要件 | (13)か(14)のどちらか | 不要 |
Ⅰは人材要件(9)(10)の両方が必要で、Ⅱはどちらか1つで足ります。Ⅰで(14)の看取りの実績を選ぶ場合は、体制要件(6)の看護師との連携や対応方針もあわせて必要です。
重度の利用者が少ない事業所は、まず訪問介護の特定事業所加算Ⅱを目指し、利用者の状態に合わせてⅠを検討する流れになります。
訪問介護の特定事業所加算Ⅱの要件
訪問介護の特定事業所加算Ⅱの要件は、体制要件(1)〜(5)と、人材要件(9)か(10)のどちらかです。重度者等対応要件はありません。
- (9):訪問介護員等のうち、介護福祉士が30%以上。または、介護福祉士・実務者研修修了者などが50%以上
- (10):サ責全員が、実務3年以上の介護福祉士か、実務5年以上の実務者研修修了者など
訪問介護の特定事業所加算でいう(10)の「実務経験」は、サ責として働いた期間ではありません。施設か在宅かを問わず、介護の仕事をした期間で、資格を取る前の期間も含めます(出典:厚生労働省 留意事項通知)。
常勤のサ責を2人置く必要がある事業所は、(10)を満たすために常勤のサ責を2人以上置く必要があります。サ責の資格や配置の基準は、次の記事にまとめています。
サービス提供責任者の資格要件|介護保険と障害福祉の違い
carejoblink.com
重度訪問介護の特定事業所加算
重度訪問介護の特定事業所加算は、障害福祉サービスの加算で、Ⅰが20%、ⅡとⅢが10%です。介護保険の訪問介護の特定事業所加算とは、要件の中身が違います。
加算率は、厚生労働省の障害福祉サービス費の算定構造(令和6年度)で確認できます。
山口県の案内資料(2019年作成)では、重度訪問介護だけの要件として、次の2点が挙げられています。
- 年間を通して24時間派遣ができ、実際に深夜帯もサービスを提供している
- 重度者対応の割合は、区分5以上やたんの吸引等が必要な人が50%以上(ほかのサービスは30%以上)
出典:山口県「特定事業所加算の取得について」。作成時期が古いため、届け出の前に、指定を受けた自治体の最新の案内で確かめてください。
訪問介護の特定事業所加算まとめ
訪問介護の特定事業所加算は、区分ごとに必要な要件の組み合わせが違います。算定を始めたあとも、記録が要件どおりかを確かめ続けることが大切です。
- 体制要件(1)〜(5)は全区分で必要
- 加算率はⅠ20%、Ⅱ・Ⅲ10%、Ⅳ・Ⅴ3%
- Ⅰ〜Ⅳはどれか1つ、Ⅴは組み合わせができる
- 文書等の指示は、サービスを始める前に出す
訪問介護の特定事業所加算の要件を満たさなくなったときは、すぐに届け出が必要です。迷う点は、指定を受けた自治体の担当課に確認してください。
- 執筆者
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神野司(かみの つかさ)
大阪で訪問介護事業所を13年間経営。2018〜2022年は東京の高齢者
デイサービス代表も兼任し、大阪・東京両方で採用面接を50例以上経験。
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