元・訪問介護事業所経営者が語る、現場のホンネ

訪問介護の仕事がきついと言われる理由、13年経営した立場から

訪問介護の仕事がきついと言われる理由、13年経営した立場から

「訪問介護はきつい」——この言葉を、あなたも一度は目にしたことがあると思います。

13年間、経営者として、そして現場にも入りながら見てきた立場から、
実際に何がきついのか、そしてそのきつさとどう向き合ってきたか
を、具体的にお伝えします。

身体的なきつさ:1日6〜7件を回る体力仕事

訪問介護は、事業所にもよりますが、
1日に多いときは6〜7件を回ることもあります。

プラスして、入浴介助や、知的障害のある方(多動の傾向がある方)の
外出介護など、体力仕事がメインになる場面が多く、腰を痛めやすい
仕事
だというのが実感です。

精神的なきつさ:暴言、奇声、そして常に見られている緊張感

高齢者の介護では、認知症の特性もあり、
罵声や暴力をヘルパーが受けたという事例をよく聞きます。
これは、
精神的にかなり堪えるものです。

また、重度の知的障がいのある方の外出介護中、電車内で大きな奇声を
あげられたとき、周囲から「ヘルパーが何とかしろよ」と見られている
感覚
があり、これも精神的にきつい場面です。

入浴介助や医療行為で訪問した際は、
常にご家族に見られている状態で、緊張しっぱなし
という側面もあります。

時間的なきつさ:拘束時間の長さと、休憩の取りづらさ

特に登録ヘルパーの方に多いのが、朝9時に1件、昼過ぎ13時に1件、
夕方18時に1件、というような働き方
です。自宅が近ければ一度
帰宅できますが、帰らずに時間を潰すとなると、
拘束時間が長いのに、収入は
その分に見合わない
という状況が生まれます。

忙しい事業所では、利用者Aさんの家からBさんの家への移動時間が
ぎりぎりに組まれ、遅刻しそうになることもあります。
訪問介護には、一般的な仕事のような「12時〜13時は昼休み」
という決まった休憩がなく、昼食もろくに取れない場合があります。

忘れられない、身体的な限界で辞めた方の話

体重35kgほどの男の子を、ベッドから車椅子へ移乗する介助が、
当事業所では頻繁にありました。
これまで、この移乗ができなかったヘルパーは一人もいませんでした。

神野司

神野司

ただ一人だけ、同行指導を5回ほど重ねても、習得できなかった方がいました。
見た目はか弱そうではなく、ごく普通の体格の中年女性でしたが、
身長が平均より低く、移乗のコツを教えても、どうしても身につきませんでした。
振れる他の仕事もなく、最終的にはご本人から退職の申し出がありました。

「思ったよりきつくない」という、もう一つの実感

ここまで、きつい面を正直にお伝えしてきました。ただ、
人は慣れる生き物です。体力的なつらさは、コツを掴めば
かなり軽減されます。

精神的なきつさも、コミュニケーションの
取り方次第で、大きく軽減できます。
暴言や奇声をあげる利用者様に対して、
「どんな声かけをすればマシになるか」を検討する、という姿勢そのものが、
きつさを和らげる方法になります。

「思ったよりきつくない」は、気持ちの持ちよう次第で変わる部分もあります。
精神論だと言われるかもしれませんが、同じ仕事をするなら楽しくしたい。
そのためには、考え方・捉え方を変えるしかないと思っています。

訪問介護と施設介護、それぞれの「きつさ」の違い

訪問介護と施設介護、どちらが「大変か」という話ではなく、
きつさの種類そのものが違うというのが実感です。

施設介護には、施設介護ならではの利点があります。
移動時間がなく、夏はクーラー、冬は暖房が効いた環境で介護ができます。
お昼休みも、交代制で12時〜14時くらいの間に取れることが多いです。

パート勤務であれば、拘束時間の振れ幅が少なく、収入も安定しやすいです。
そして何より、一人でサービスを行うことがなく、周りに仲間が
いるという安心感
があります。

一方、訪問介護は、これらとは違う形の働き方になります。
短時間のサービスを何件か回るため、
その都度リフレッシュでき、集中して介護に取り組めます。移動時間そのものが、
気分転換になるという感覚もあります。
ただし、これは私自身の相性の
話であり、決まった休憩時間の取りづらさや、基本的に一人でサービスに
あたる心細さは、訪問介護ならではの負担だとも言えます。

どちらが優れているという話ではありません。「仲間と一緒に、安定した
環境で働きたいか」「一人での裁量が多い分、気分転換もしやすい働き方が
合っているか」——自分がどちらのスタイルに向いているかで、選ぶと良いと思います。

まとめ:きつさを言い出せば、どの仕事もきりがない

どの業種にも、それぞれのきつさがあります。まして介護は、
人の役に立つ仕事です。きつさばかりに目を向けるのではなく、
利用者様に笑顔を与えられる仕事として、楽しんで向き合ってほしいと思っています。

未経験からこの業界に入る際の視点については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

執筆者
神野司(かみの つかさ)
大阪で訪問介護事業所を13年間経営。2018〜2022年は東京の高齢者デイサービス代表も兼任し、大阪・東京両方で採用面接を50例以上経験。
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